少子化が進んでいると言われる一方で、ファミリー層の消費活動にも注目が集まっています。
この記事では、ファミリー層向けのマーケティングを行う利点やポイントを紹介します。ファミリー層は、うまく取り込めれば、企業側にもメリットが大きい消費者層でもあります。そういった事情についても、詳しく解説します。
ファミリー層とは、子育て中の世代を指します。年代としては20代から40代くらいです。
以前は、若くして結婚・出産をすることが当たり前でした。国土交通省のデータによれば、1950年の平均初産年齢は24歳です。
それに対して現在では、平均初産年齢は30.9歳と大幅に年齢が上がりました。 産後も仕事に復帰し、フルタイムで働くママも増え、「ママ像」も、「ファミリー像」も大きく変化しています。自由になる時間が少なく、近くに子育てについて相談する人があまりいないママが増えました。一方で、子育ては夫婦でするもの、という意識を持つ人が増え、子どもの行事には家族みんなで参加する家庭が増えました。
少子化が進み、子どもの人数が減る一方で、子どもにかけるお金は増えています。また、子育てのためには必要な物品も多く、それらは買わざるを得ません。そのため、ファミリー層の市場規模はまだまだ大きく、今まで参入していなかった企業が参入する価値のある分野と言えます。
ファミリー層に訴求する上で大事なのが「親の視点」です。子どもが喜ぶことはもちろんですが、「子どものためになる」など、親も満足できるような訴求の仕方をすることで、顧客を掴むことができます。
ここでは、ファミリー層へのマーケティングを考える前段階として、マーケティング戦略の基本を整理しておきましょう。
マーケティングとは、消費者が何を求めているのか分析した上で、ニーズに合った「モノ」や「サービス」を作り、購入してもらうための仕組みをつくることです。今流行しているものは何か、ターゲットはどういった層なのか、価格や販売経路はどうなっているか、効果的な広告は何かなど、「モノ」「サービス」の開発から販売に至るまでの流れ、を戦略立てて考え、実行していきます。
マーケティングの戦略を考える上で、まずは市場調査を行います。
業界の内外を問わず何がトレンドなのかといった概況をはじめ、自社が他社に勝っているポイントはどこなのか、今市場で求められるものは何かなどを、適切に情報収集し、分析することで、トレンドに乗った商品開発へとつなげます。
市場調査の際には、以下のような分析手法がよく使われます。
SWOT分析とは、自社の外部環境と内部環境を「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素で要因分析するフレームワークです。SWOT分析の主な目的は効果的な経営・マーケティング戦略を立案することです。ビジネスの場面で戦略や計画を立てるためには、自社が置かれている現状や競合企業、市場の将来性といった複数の要素を正しく把握し、分析することが欠かせません。また、SWOT分析を行うことで、マーケティング戦略の立案に役立つだけでなく、既存事業の改善点や、新規事業の将来的なリスクも発見することができます。
PEST分析は、「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの要素を踏まえ、自社を取り巻くマクロ環境=外部環境を把握する分析手法です。4つの要素が自社に与える影響や機会、課題の洗い出しに役立ちます。
外部環境を取り巻く要因を細かく分析するフレームワークであることから、SWOT分析を行う際に、外部環境をより詳細に分析するためのツールとして併用して活用することが効果的です。
3C分析は、「顧客(C:顧客(Customer):市場と顧客のニーズはどのように変化しているのか」「自社(Company):顧客と競合他社の動きを踏まえ、自社が成功できる要因はどこにあるか」「競合他社(Competitor):競合他社は環境の変化に対して、どのように応じているのか」の3つを軸として、市場環境を分析するフレームワークです。
PEST分析が外部環境をより詳細に分析するのに対し、3C分析はさまざまな視点から自社の現状を把握します。変化が激しい現代のビジネス環境において重要な分析手法となっています。
続いては市場の細分化です。
市場調査で得た情報をもとに、情報を細かくグループ分けしていきます。この作業はセグメーションとも呼ばれます。市場内の消費者を、価値観やニーズ・年齢・性別・職業などのさまざまな要素でグループ分けすることで、自社のビジネスに適した市場はどこなのか、見つけやすくなります。
自社のビジネス展開に向いている市場がどこかがわかったら、ターゲティングに移ります。先ほどグループ分けした市場のうち、どの層を狙うか、対象を絞ります。
「市場規模(Realistic Scale)」「成長性(Rate of Growth」)「顧客の優位順・波及効果(Rank/Ripple Effect)」「競合(Rival)」「到達可能性(Reach)」「反応の測定(Response)」の6つの指標を意識して考えると、ターゲティングしやすくなります。
ターゲットが決まったら、どのようにアプローチしていくかを検討します。
現状において自社がどのような位置にいるのかを分析した上で、ターゲット層に認知されるにはどうアプローチしていくのがいいか、検討します。
アプローチ方法の設定では「Product(製品)」「Price(価格)」「Promotion(広告)」「Place(流通)」の4Pから考えるのがよく、顧客の立場から考える時には「Customer Value(顧客価値)」「Cost(コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(対話)」の4Cから検討するとよいでしょう。
アプローチ方法が決まったら、ついに実行です。設定したターゲット層に対し設定したアプローチ方法でアプローチをかけます。実行して、自分たちの予測と比較してどうだったか、問題点はなかったか、分析し、問題点は改善してくことが必要です。
「Plan(計画)」「Do(行動)」「Check(評価・確認)」「Action(改善)」のPDCAサイクルはあまりにも有名ですが、この「C」「A」がどうなされるかによって、最終的にマーケティングがうまくいったかどうかも変わってきます。
マーケティングは、細かな工程の積み重ねによって成り立つものです。成功させるためには、各プロセスを丁寧に扱い、緻密な分析に基づいた考えで少しずつ、確実に進めていくことが大切です。
ファミリー層をターゲットするメリットには次のようなものがあります。
なぜターゲットがファミリー層になるとそのようなことが起こるか、秘密はファミリー層のキーマンにありました。
ファミリー層における、家庭内での購入意思決定権はママ(妻)にあるとされています。
家庭内消費における購入意思決定権に関するある調査 によると、女性が決定権を持つケースが全調査対象項目のうち8割もあったとのことです。また、年齢が若くなるに連れて「夫婦で相談」すると答える層が増えますが、ママ(妻)が関与していることには変わりなさそうです。
ママ層は何を購入するか考える時に、「信頼できるメーカー・ブランドのものかどうか」を選択基準のひとつにする傾向にあります。そのため、一度ママに選ばれると、特に問題がなければママがその商品をリピートし、長期顧客となりやすいです。
また、ママに限らず、女性は男性に比べてオンライン・オフライン問わず情報交換、情報共有を盛んに行う傾向にあり、商品購入時にも、口コミを重視する傾向にあります。情報交換に重きを置く、かつ決定権を持つママ向けにマーケティングすることで、良い商品やサービスに対する口コミが広がりやすくなります。
良い口コミが広がればシェア拡大のチャンスであるばかりでなく、ママ層を中心に上下の世代にも口コミが伝わるため、ターゲット層拡大のチャンスにもなります。
ファミリー層をターゲットとしたマーケティングの際には、「子ども」「ママ」両方の視点を持つことが大切です。
子どもが喜び、かつ、ママも満足できることが必要です。「ママが満足できる」とは、具体的には、ママ自身も楽しむことができる、子どものためになったと思える、出かけた目的が達成できる、などです。
昨今は晩婚化が進み、初産年齢も30.9歳(令和4年データ)になるなど、ある程度社会で一社会人として活躍したり、おしゃれや自己啓発を通じて自己実現をしてきたママが増えています。子どもが生まれたことにより、子ども中心の考え方になっているとはいえ、ママインスタグラマーの流行からもわかるように、ママになったからといって自己実現を諦めない人が増えています。
このような層には、ただ子どもが喜ぶというだけでは選ばれません。全体を通じて、「ママの視点から見てどうか」「ママにとってもメリットがあるかどうか」という観点を持つことが、ファミリー層をターゲットとしたマーケティングで成功するコツです。
まずは、子どもの安心・安全が確保されていることです。子どもが怪我をしそうなところがないことはもちろん、衛生管理にも十分配慮しましょう。
特に乳幼児連れの場合、出かける先を選ぶ上で、お店全体に衛生管理が行き届いているか、キッズスペースやおむつ変えシートが汚れていないかは非常に重要な観点となります。また、赤ちゃん連れだと寝かせておくことも多いため、低い位置の汚れが目につきやすいです。
衛生管理は子ども連れが対象かどうか関係なしに徹底されるべきものではありますが、今一度不備がないか見直してみましょう。
子どもが喜びそうな要素を盛り込むことでも、ファミリー層に訴求することができます。
例えばショッピングモールでのキャラクターショーや、飲食店でのキャラクターグッズのおまけなど、子どもに訴求することで、ファミリーでの来店・利用を促すマーケティング手法は数多く展開されています。
「子どもの喜ぶ顔が見たい」という親の心理を利用したものですが、ショッピングモールであれば「子どもが喜ぶイベント」+「親のニーズが満たせる店舗展開」というように、両方のニーズが満たせると、消費活動も活発になるでしょう。
子ども連れでも過ごしやすい環境を用意することでも、ファミリー層に訴求することができます。
例えば飲食店であれば、小上がりの座敷席があり赤ちゃん連れでも安心して楽しめる、ベビーカーでそのまま入店することができるなどです。子ども用のカトラリーがあること、離乳食の持ち込みがOKであること、おむつ替えシートがあること、子供用のトイレまたは補助便座があることなども大切です。
また、子ども連れに対しても明るく笑顔で接客してくれる、多少食事に時間がかかっても嫌な顔をされない、なども、こちらが思っている以上にファミリー層は気にしているものです。
子どもから大人まで、みんなが安心して楽しく過ごせる環境を作ることが、ファミリー層をターゲットとしたマーケティングを成功させる秘訣です。
ファミリー層を集客する際に適した手法や媒体はあるのでしょうか。子育て世代と言われるファミリー層の特徴として、次のようなものがあります。
このようなファミリー層の特徴とうまく合致するのが、インターネット上の子育てメディアや、Instagram、LINE、X(旧:Twitter)などのSNSメディアです。ファミリー層のほとんどはスマートフォンを持っているため、家事や育児の隙間時間でSNSをチェックしたり、子育てメディアで気になることを調べたり、という活用の仕方をしています。
SNSの自社アカウントで商品情報を発信したり、SNSを活用したキャンペーン展開をすることで、ファミリー層に効果的に訴求することができます。しかし、SNSは、運用担当者にネットリテラシーの理解がないと炎上やブランドのイメージダウンにつながるリスクがあります。運用担当者は、各種SNSの特徴やユーザー層、使い方を事前に理解しておく必要があります。場合によっては、運用担当者を複数用意し、ダブルチェックすると安心かもしれません。一方で、ツールのためにシステムを構築する必要がなく、運用費用もほとんどかからないという手軽さは大きなメリットです。
最近では、ママインスタグラマーと呼ばれるような、ママでありながら時間をうまくやりくりしておしゃれをしたり、美容情報を発信したり、時短料理を紹介したりする人が増えています。こういった人たちはフォロワー数も多く、彼女たちが紹介した商品の売れ行きが上がるなど、ママ層にかなりの影響力を持っています。ママインスタグラマーを起用してPR案件に参加してもらうことで、ママ層に効果的に訴えかけることができます。
また、子育てイベントに出展・協賛することでも、ママ層への訴求は効果的にできます。こういったイベントは子育てメディアでも多く紹介されており、ママたちは子どもを喜ばせるためや、子どもとの思い出作りのため、育児に関する学びを得るためにやってきます。そういった場で自社製品を体験してもらったり、サンプル品やチラシを配布したりすることで、より印象に残りやすくなります。
ではここで、ファミリー層向けのマーケティングの成功例を見てみましょう。IKEAの事例は、ファミリー層が活用しているSNSで消費者を巻き込んだマーケティングの成功例です。また、マクドナルドの事例は、子どもをターゲットにしたマーケティングで成功した例です。
IKEAでは、Instagramを活用したキャンペーンを多く展開しています。例えば2023年冬には、クリスマスシーズンに合わせて「#イケアとクリスマス Instagramキャンペーン」を展開していました。IKEAの製品を使ってクリスマスの飾り付けやお菓子作りなどを楽しむ写真、動画を指定のタグとともに投稿した人に、抽選でIKEAのギフトカードをプレゼントするというものです。その他にも今までには子どもがIKEA製品を使っているところを投稿することで参加できるキャンペーン、新生活に向けた購入品や模様替えの様子を投稿することで参加できるキャンペーンなどが展開されています。
IKEAで買い物をすることでキャンペーンに参加でき、当選すればギフトカードを使うためにまたIKEAに行きたくなる、という仕組みです。また、こういったキャンペーンは参加条件にIKEAのInstagramフォローが含まれるため、フォロワー増加にも貢献するでしょう。
Instagramの利用層は10代、20代、30代が多く、IKEAの顧客層ともマッチしたキャンペーン展開といえます。
一方のマクドナルドは、子どもをターゲットにマーケティングをすることで成功しています。
まず、マクドナルドといえば誰しもが思い浮かぶであろう「ハッピーセット」です。テレビCMでもよく見かけますよね。話題のキャラクターなどを起用した子ども心を掴むおもちゃがセットになっていることで、子どもに「おもちゃが欲しい!」と思わせ、家族での利用を促します。ついてくるおもちゃは定期的に変わるし、毎期複数種類用意されていますので、コンスタントに何度も行きたくなる仕掛けになっています。
最近ではサイドメニューを「フライドポテト」「えだまめコーン」「サイドサラダ」の中から選ぶことができ 、健康志向も満たすように工夫されています。
また、マクドナルドの業務を実際に体験できる「マックアドベンチャー 」も非常に人気です。980円のスタンダードプラン、1200円のスペシャルバーガープランから選ぶことができ、実際にバーガー作りなどを体験することができます。
身近にあるマクドナルドだからこそ、仕事をしているお兄さんお姉さんに憧れる、仕事のイメージがつきやすい、自分で仕事を体験したからこそまた行きたくなる、という仕組みです。体験費用も比較的安価 で、体験させやすい点も保護者の心を掴んでいます。
また、プレイランド という子ども向けの遊具を併設している店舗があったり、子ども向けアプリ「タッチでハッピー 」をリリースしていたりと、子どもを楽しませる工夫がマクドナルドには多くあります。
ファミリー層の食事内容の決定権が、ある程度子どもにあることを理解した上での施策と言えるでしょう。
ファミリー層向けにマーケティングを行う際は、安全管理に注意しましょう。
ファミリー層にとって、子どもの安全が守られていることが第一です。キッズスペースを用意するのであれば十分な広さを確保する、尖ったものや怪我をしそうなものを近くに置かないなどの安全対策をしましょう。
それでも子どもは大人には予想もつかないような行動を取るものです。何らかの理由で保護者の目が離れるのであれば、キッズスペースに保育スタッフをつける等の配慮が必要かもしれません。
また、子どもをターゲットとしてファミリー層に訴求する戦略を立てるのなら、「購入意思決定権を持つママも満足できる」という視点を忘れてはいけません。ママが満足することができれば、リピーターとなる可能性は高いです。
ここまで、ファミリー層へのマーケティングについて、マーケティングの手法とともに見てきました。
ファミリー層へのマーケティングにおいては、子どもが楽しめることだけでなく、親も満足できることが大事であること、購入意思決定権を持つのはママ(妻)の場合が多いこと、デジタルネイティブ世代が多いためSNSを有効活用することがポイントであることなどがわかりました。
ファミリー層は、うまく心を掴むことができればリピーターになりやすく、また、口コミ発信をしてくれるなど、企業側のメリットも大きいです。
うまくマーケティング分析し、子どもと親のニーズを満たすことで、ファミリー層を取り込んでいきましょう。
他にも幼稚園・保育園イベントや幼稚園・保育園モニタリングを行っているのでぜひご覧ください。
株式会社エンジン
代表取締役 常盤 亮太
世の中の原動力となるような会社にしたい。
その想いから社名を「エンジン」と名付けました。
また、人と人の縁を大切にし、仁義を重んじること。
そして、円陣が組めるくらい、そんな人間の集団を創っていくこと。
そんな想いも込めています。
当社では、企業=人という考え方が根底にあります。
世の中の原動力となるような会社は当然ですが素晴らしい企業であり、
素晴らしい企業であれば、素晴らしい人間の集団であると思っています。